気まぐれすとーりーず
1投稿者:名捨て人@御昼です  投稿日:2003/05/01(木)12:01:46
頭の中に沸きあがってくる話をとり止めなく綴ります。
長編なのかエッセーなのかエロいのか…心の赴くままに!
登場人物、団体名は実在のものとは何ら関係ない・・・・・・と思う。
69投稿者:再会63  投稿日:2007/11/12(月)20:45:28
街中を家に向けてバイクを走らせていると、少し汗ばんできた。
今日もかなり暑くなるのか?
ましてや、京都はこっちよりも気温が高いことの方が多いし
スーツなんか着こんで行かない方がいいかもしれない。
今日の格好をあれこれ思案しなおしてるうちに家の前に着いた。
フルフェイスのヘルメットを脱ぐと頭が蒸れていることを自覚した。
髪型はぺしゃんこに潰れて河童のようになっているようだ。
まあ、いつものことだが。

家に入ると、母が慌しく出かける支度をしていた。
「なんや、外に出てとったんかいな。
 あんたも昼から出掛けるのやろ、戸締りちゃんとしといてよ。」
母は、出かけるときになって何で電話が掛かって来るのやろ、とか
あー、いっつも時間ギリギリになるわ、とか誰に言うでなく
声に出して家の中をひと通りゴソゴソした後、
「あんた、晩ご飯はどないすんの?」と訊いてきた。
ちょっと考えてから
「食べてくるかも、いや、そうした方がええやろ?」
そう答えたら、それじゃそうしておいて、と言い残して
母は出掛けて行った。
70投稿者:再会64  投稿日:2007/11/12(月)20:50:31
誰も居ないリビングで、テレビを眺めてぼんやり時間潰ししてると
うつらうつらしていた。
気がつくと、いつの間にか結構時間が経っていた。
シャワーを浴びてから身支度する。堅苦しいスーツはやめてカジュアルな
格好で行こう……失礼にはならない程度で。
下は色の濃いジーンズで上はノーネクタイ、夏物のジャケットを選んだ。
暑ければジャッケットを脱いで肩にでもかければいい。
関西地方は全国的に快晴らしかったので、折りたたみ傘を
持っていかずに小さなセカンドバックを手にして家を出た。

大阪に出てから先はJRに乗り換えだ。
今まで何回この路線を行き来したのだろうか。
学生時代の通学電車のことを思い出す。よくまあ、下宿しないで
4年間通ったものだ。片道1時間半はかかっていたのだ。
電車内の時間てのを、もっと有効に活用すべきだったなと今になって
思う。英語の予習や読書に充てていたが、寝てるほうが多かったから。
 車窓から見覚えのある風景が見える。
記憶が呼び覚まされる。
秋には稲刈りが終わったあぜ道に、赤い彼岸花が咲いていたっけ。
大雪が降って電車が遅れたとき、子供がつくったのか雪だるまを見かけたし…
71投稿者:再会65  投稿日:2007/11/12(月)21:21:38
通学途中の想い出に浸りながら外を見てるうちに京都に着いた。
京都駅から地下鉄に乗りかえる。
思ったよりも少し早く着いたので、周辺を少し散策したのだが
さすがに京都は暑く、汗はあまりかかない体質の僕でも
脇の下に汗をかいてるのがはっきりわかったので散策は切り上げて
会場になっているホテルへ入った。

ひんやりと涼しいホテルの中。
入った瞬間に、何やら妙な緊張感が自分の中に走った。
いや、緊張感というより期待感、と言ったほうが良いか…
会場は3階の宴会場のひとつ。
今日は結婚式の披露宴も多いようだった。幾つかの受け付けを
見渡した後、会場を見つけた。
受け付けには三人ほど座っていた。
どうやら上の方の卒業年代の先輩方らしかった。
「どうも、こんにちは……お世話になります…」
そう言いながら、案内状を出して受付をしようとしたら

「おぉ、スギ!! 久しぶりじゃんか!」
と、真ん中の男の人が声をあげた。
72投稿者:再会66  投稿日:2007/11/12(月)21:40:07
額の広い、ちょっぴりおなかの出た男の人だったが。

「え?、ああッ! は、橋本先輩?!」

僕はわざと大袈裟にしてるんじゃないかと、思われてしまう位
本当に驚いてしまった。
学生時代は、下級生の女子部員の人気ナンバーワンだった先輩。
美声の持ち主であることはもちろんだが、爽やかな風貌と
引き締まった体は同性の僕からみても憧れたものだった。
それが、髪の薄い太った中年へと変貌しつつある途上に……

「橋本先輩、えらい変わらはったってゆーか…えーと」
なんとか当たり障りのない言葉を選ぼうとしたら
「結婚したらなぁ、こうなってしまうんだよ。ハハハハ」
先輩は笑いながら自分のお腹をさすって見せた。

「幸せ太り、ってやつですよね。いいですやん、幸せそうで」
頭の事は触れず、体型のことのみに話題を振った。
「そのうち、俺も市島みたいな体型になるかもな……
 あいつも今日来てるで」
73投稿者:再会67  投稿日:2007/11/12(月)21:53:46
橋本先輩と手短に近況報告をした後、会場に入って
先に来ているという市島を探そうと思った。

会場はバイキング形式で、回りにテーブルが並べてあった。
幾つかのテーブルでは僕の知らない、かなり上の年代と思われる
先輩方が、すでにグループになって昔話に花を咲かせていた。
自分の年代に近い先輩、後輩そして同期は何人来るのか。
ちょっと不安になったとき。

「杉やん、こっちこっち」

隅っこの方のテーブルの傍に、椅子に腰掛けた体格の良い男が
こっちにむかって手招きしていた。
「市島、やっぱり来たんやな」
「いや、来るつもりなかったケドな、ヒマっちゅーか時間できたし」
笑いながらそう言うと、ポケットからタバコを出して火をつけた。
「……あいかわらず、セブンスターか」
そう市島に言うと
「軽いのに替えようとしたけど、やっぱりこれに戻るわ」
目を細めて美味そうにタバコを吹かした。
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